Solo Guitar Christmas Time

南澤大介氏プロデュースのソロギタリストによるクリスマスソング集

誰もが知るクリスマスソングの数々を凄腕ギタリストたちがソロ演奏でカバーしたアルバム『Solo Guitar Christmas Time』が誕生!!

 ジャケ写

Solo Guitar Christmas Time

 2015年に発売、10人のギタリストがビートルズの楽曲をソロ演奏でカバーしたアルバム『While Solo Guitar Beatly Weeps』。誰もが知る名曲の数々を、オリジナルが持つメロディーの良さを活かしたうえで、参加ギタリストたちが耳を唸らせる驚異的なプレイを披露。耳の肥えた音楽マニアから、心地好い作業用BGMとして愛好する人たちまで、『While Solo Guitar Beatly Weeps』は幅広い層から支持を得続けるロングヒット作品になっている。

 

 その反響を受け、SOLO GUITAR RECORDSが新たな作品を制作。それが、誰もが知るクリスマスソングをソロ演奏でカバーしたアルバム『Solo Guitar Christmas Time』になる。

 『While Solo Guitar Beatly Weeps』にも参加、クリスマスソング・コレクターとしても有名なギタリストの南澤大介が音頭を取り(『While Solo Guitar Beatly Weeps』は土門秀明が発起人)、国内のみならず、中国や台湾のプレイヤーにも声をかけ、総勢12名のギタリストが参加。これからの季節を彩るのはもちろん、春夏秋冬何時聴いても胸に心地好い、触れた人の心を暖めてくれる肌触り優しい演奏曲を詰め込んだ作品として完成した。

 

 参加アーティストと収録曲

okapi
Santa Claus Is Comin’ To Town


右手を駆使して、リズム、ベースライン、メロディライン、和音を同時に奏でる特殊奏法。東京を中心に中国・台湾・韓国・マレーシアなど、アジア全域で活動中。2016年にはヨーロッパ進出も果たす。

南澤 大介
Wonderful Christmas Time

南澤大介 インタビュー
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作・編曲家として、プラネタリウムや演劇、TVなどのサウンドトラック制作を中心に活動。ギター1本でロックやポップスの名曲を演奏したCD付き楽譜集「ソロ・ギターのしらべ」シリーズが累計40万部を突破。

奏帆
Frosty The Snowman


1997年北海道生まれ。2011年に初ライブ、西村歩、打田十紀夫、IFSGF台北では押尾コータローのOA。Jacques Stotzem、Justin King、Trace Bundyらと共演。2016年4ヶ国14公演出演。

Minami 董運昌
Jingle Bells


台湾フィンガーピッキングのパイオニア。高校でアコースティックギターを弾き始め、2015年に20都市以上の中国のツアーを成功。ギタープレイヤーとして、数多くのレコーディングに参加。

ぷう吉
Jesu, Joy Of Man’s Desiring


物理学者を目指していた変り種ギタリスト。多数のコンテストで賞を獲得後、本格的な演奏活動を開始。アコースティックギターマガジンでの特集記事や、オーストラリア、マレーシア、台湾など海外公演も豊富。

Seven
Christmas Time Is Here


上海出身。1998年からギターを始め、2008年頃からフィンガーピッキング・スタイルに傾倒。2012年には岡崎倫典、中川イサトやDon Rossとも共演。2016年には4枚目となるアルバム『星河』をリリース。

西村 歩
White Christmas


宮崎県生まれ。13歳よりギターを始める。ギターテクニック向上の為にカントリーブルース等の練習を開始。FINGER PICKING DAY2008に出場、最優秀賞等の4部門を受賞。(最多同時受賞)

ダニエル・コフリン
Hark The Herald Angels Sing


高校卒業後よりアコギでのソロ演奏を独学で始める。東京都公認のストリートミュージシャン「ヘブンアーティスト」として都内各所でフリーライブを敢行中。また、コンポーザー&アレンジャーとしても活動中。

井草聖二
The First Noel

井草聖二 インタビュー
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牧師家庭に生まれ幼少より讃美歌、ゴスペルに親しむ。2009年4月FINGER PICKING DAY2009に出場し、「最優秀賞」「オリジナルアレンジ賞」を受賞。

伍々 慧
The Christmas Song


15歳でFINGER PICKING DAY2004最優秀賞含む4部門を受賞。史上(最年少最多記録)。弾むように軽やかに、感情が激しく沸き立つように、しなやかな指先が紡ぎ出す情感豊かなメロディをギター1本で奏でる。

小川倫生
Candlelight Carol

小川倫生 インタビュー
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1990年自主制作レーベル「Greenwind Records」設立。 1998年同レーベルから『太陽と羅針盤』をリリース。 現在までに、6タイトルのアコースティックギター・インストゥルメンタルのアルバムを発表。

土門秀明
WINTER SONG

土門秀明 インタビュー
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バブルガム・ブラザーズのギタリストとして活躍。後、2001年に渡英。日本人初のロンドン地下鉄公認バスカーとしてライセンスを取得してから、13年間の全ての生活費をバスキングで稼ぎだしてきた伝説の男。

 

 

名プレイヤーたちの音楽が心地好い臨場感を持って耳に染み渡る!!

 カッティングするギターの音色が優しさとウキウキとする高揚を与えてゆくのが、okapiが演奏する『Santa Claus Is Comin’ To Town』。演奏が進むにつれ、駆け上がるような昂りを胸に覚えてゆく。まさに、サンタの訪れる日が近づくたびに気持ちがワクワク膨らんでいくような楽曲だ。

 この作品のプロデューサーでもある南澤大介は、『Wonderful Christmas Time』を選曲。今回はビートルズではなく、ポール・マッカートニーの楽曲を選んだところへ、前作からの連なりを覚えさせる。まろやかな音色が折り重なりながら、しっとりとした演奏の中にも期待に胸膨らむ嬉しいざわめきを覚えてゆく。ハーモニクスを用いたパートでは、クスリマスベルが鳴り響くような感覚さえ与えてくれた。

 果てなく続く広大な雪景色を、温かい暖炉を前に、大きな窓からサンタクロースの到着を心待ちに眺めている気分!?。奏帆の届けた『Frosty The Snowman』からは、期待に胸弾む高揚感が伝わってきた。強く主張しているわけではない。でも、そのワクワクがどんどん膨らんでゆくからこそ、一緒に小さなときめきをこの楽曲に覚えてしまう。

 『Jingle Bells』を届けてくれたのは、台湾のギタリスト界の中、フィンガーピッキングのパイオニアとして名の知れ渡っている董運昌。お馴染みの楽曲へ細やかに、でも、さりげなくフレーズの数々を加えたり、アコギ特有の強弱な振幅を与えてゆくことで、よりドラマ性を持った『Jingle Bells』として完成。この曲に触れている間、ウキウキと気持ちが沸き立ち続けていた。

 バッハの合唱曲『Jesu, Joy of Man’s Desiring』(『主よ、人の望みの喜びよ』)をチョイスしたのが、ぷう吉。変拍子を多用した、しかも複雑に転調してゆく楽曲を、ぷう吉は流れる清流の如き演奏を持って、肌触り良く温もりある音色のもと届けてくれた。耳心地好いのに冴えた旋律の動きを見せる理由からか、終始、演奏に疾走感も覚えていた。

 上海から参加してくれたSevenは、『Christmas Time Is Here』をプレイ。とてもシンプルな演奏にも関わらず、その指の動きは、一つ一つの音色に豊かな存在感を与えてゆく。むしろ、届けたい音色のみを強調したことで、素朴な演奏へ熱がどんどん染み渡ってゆくような優しい興奮を、彼の演奏に覚えていた。

 溜めや空間美を活かし、時には流れるような調べを響かせながら、楽曲の軸を成す印象深い旋律を際立たせる演奏を届けてくれたのが、『White Christmas』を奏でた西村渉。緩急強弱活かした演奏は、シンプルなプレイの中へ耳を惹くドラマを作りあげてゆく。3分にも満たない中に、西村渉は素敵な物語を描き出してくれた。

 賛美歌『Hark The Herald Angels Sing』(『天には栄え』)を奏したのが、東京都公認のストリートミュージャン「ヘブンアーティスト」として活動中のダニエル・コフリン。硬質なギターの音色も印象的。弦の音が弾かれるたびに、そこから溢れ出るのは崇高な音の調べ。けっして賛美歌だからという理由ではない、彼の紡ぐギターの音色に澄み渡る静謐さを覚えるからこそ、想いを捧げるよう、その演奏を心で受け止めていた。

 よく「歌っているような」という言葉が用いられるが、『The First Noel』を奏でた井草聖二の演奏からも同じ印象を感じていた。ただし、歌う(響かせる)と言っても、ひと言ひと言に魂を込めながら想いを伝える強さと逞しさを、井草聖二の演奏には感じてゆく。一つ一つの音色の、なんて凛々しくも荘厳なことか。

 まろやかな音色響く演奏ながら、ぐっと気持ちを溜め込んだ上で爪弾かれる旋律の数々には、伍々慧自身が心に抱えた情熱が反映されている。『The Christmas Song』に触れながら、その優しくも哀切な音色の背景に熱い魂の疼きを抱いていた。だから、彼の演奏に強い存在感を覚えていた。

 『Candlelight Carol』を選んだのが、小川倫生。キャンドルライトに掛けた表現ではないが、彼の演奏はゆらゆら揺れる蝋燭の火のようだ。1曲の中へ躍動と温和な音色が交錯してゆく。だからこそ、シンプルな演奏の中にも円やかなドラマを覚えてしまう。身近に寄り添っていたい、そんな暖かさを伝えてくれる優しい楽曲だ。

 SOLO GUITAR RECORDSのプロデューサーでもある土門秀明は、『WINTER SONG』をセレクト。涙無しには見れない映画のクライマックスを見ているような。けっして派手ではないが、でも、鮮烈な印象を与える人生物語を描いた作品へゆったり心浸ってゆくような意識を覚えていた。土門秀明はその指先を通し、穏やかな高揚と感動で心を満たしてくれた。まさに、この作品のフィナーレを飾るに相応しい優しい楽曲だ。

 

Solo Guitar Christmas Time 詳細

タイトル Solo Guitar Christmas Time
(日本語表記『ソロ・ギター・クリスマス・タイム』)
 レコードNO HSKR-SGRA-003-2500
 JANコード 4573188510037
 レーベル Solo Guitar Records
 発売日 2016.11.19
 販売 アマゾン及び各種配信
 定価 2,500(税別)

 

 

卓越した技術を、素人が聴いて「心地好いね」と思わせてこそ、本当の意味で優れた表現者と言えること。そう、このアルバムに参加しているギタリストたちのように…。

 

 ソロギタリストに焦点を当てるのみならず、誰もが知るカバー曲を演奏することで、各プレイヤーたちの魅力や持ち味を際立たせてゆく。SOLO GUITAR RECORDSが、そう作品作りをアプローチしたことは、マニアックへ陥りがちだった世界へ、より大きなフィールドへ羽ばたくきっかけと出逢いを与えてくれた。

 先にも触れたが、各々の卓越したテクニックに驚嘆するでもいい。単に心地好い音楽として片手間に聴いてもらうでも構わない。邪魔にならないはずなのに、つい耳が惹かれ、想いを傾けてしまう音楽は、得てして難解な演奏の上に成り立っていたりもする。小難しい演奏を難しいと思わせるのではなく、卓越した技術を用いながら、素人が聴いて「心地好いね」と思わせてこそ、本当の意味で優れた表現者であり楽曲と言えること。そう、このアルバムに参加しているギタリストが奏でた曲たちのように…。

 

TEXT:長澤智典